
製造業の現場では、短納期対応や多品種少量生産のニーズが高まる中、精密板金加工や簡易金型といった「柔軟かつスピーディな加工手法」への注目が集まっています。
とはいえ、「精密板金とは何か?」「簡易金型との違いは?」といった基礎的な部分でつまずくケースも少なくありません。本記事では、精密板金加工の概要から簡易金型との違いまで解説していきます。
精密板金加工とは何か?
精密板金加工とは、薄い金属板を切断・曲げ・溶接・タップ加工などを行い、高精度な金属部品を製造する加工技術です。一般的な公差は±0.1mm以下と非常に厳密で、設計図面に忠実な仕上がりが求められます。
加工対象は主に鉄(SPCC、SECC)、ステンレス(SUS304など)、アルミ(A5052など)で、使用する設備にはファイバーレーザー加工機、NCパンチプレス、ベンディングマシン、スポット溶接機などが含まれます。近年では3D CAD/CAMとの連携により、設計変更や納期短縮にも柔軟に対応できるようになっています。
精密板金が活用される主な製品・業界
精密板金は多様な分野で利用されており、特に以下の業界で高い需要があります。
・医療機器(装置カバー、モニター台、治具フレーム)
・通信機器(筐体、アンテナ部品)
・産業機械(制御盤、配電盤、パネル)
・自動車・鉄道(インパネ部品、架台)
特に短納期対応や設計変更に強いため、製品開発段階での試作や小ロット生産に重宝されています。
精密板金と簡易金型の違い
加工方法・設備の違い
精密板金は設計変更に柔軟な個別加工が可能で、1品1様のカスタム製品に適します。一方、簡易金型はあらかじめ設計された金型を使って複数の製品を一括で成形するため、同形状の中量生産向きです。前者は加工プロセスが分かれており手間はかかりますが自由度が高く、後者は一工程で成形できるため量産効率が高いのが特徴です。
初期費用・生産リードタイムの比較
精密板金は金型不要のため初期費用が抑えられ、1〜5日程度の短納期対応が可能です。一方、簡易金型は設計・製作に1〜2週間程度かかることが多く、初期費用も発生しますが、製品単価は低く抑えられます。どちらがコスト効率的かは生産数量によって異なります。
精密板金の適用シーンと得意分野
精密板金は、その柔軟性と汎用性の高さから多岐にわたる適用シーンを持っています。まず、多品種少量生産や試作品の製作において非常に有利です。金型不要でCADデータから直接加工するため、設計変更にも迅速に対応でき、開発期間の短縮やコスト削減に貢献します。
また、複雑な形状や高精度が求められる部品の製造にも適しています。微細な加工や複雑な曲げ、溶接など、熟練の技術と最新設備を組み合わせることで、高い品質の製品を製造可能です。医療機器、航空宇宙部品、半導体製造装置部品など、特に高精度が求められる分野で活用されています。
簡易金型の適用シーンと得意分野
簡易金型は、特定の生産条件と製品特性においてその真価を発揮します。最も得意とするのは、中ロットから量産の部品製造です。本格的なプレス金型ほどではないにせよ、ある程度の生産数量が見込まれる場合にコスト効率が向上します。特に、抜き加工、曲げ加工、絞り加工など、比較的シンプルな形状のものを短時間で大量に生産するのに適しています。
また、品質の安定性と均一性が求められる製品の製造にも強みを発揮します。金型を用いてプレスするため、一度金型が完成すれば、同じ形状の製品を高い精度で繰り返し生産することが可能です。これにより、製品間のばらつきが少なく、安定した品質が確保できます。
精密板金と簡易金型の使い分けポイント
少量多品種 vs 中量量産への適応
10〜100個程度までの小ロット製品では精密板金が圧倒的に有利です。100個を超える中ロット生産で繰返し製作が見込まれる場合は簡易金型がコスト効率で勝ります。
試作から量産に向けた工程設計
初期試作段階では柔軟性の高い精密板金でスピーディに製品形状を検討し、設計確定後に簡易金型を使って本格的な生産に移行するプロセスが理想的です。これにより、金型費用の無駄を避けつつ開発スピードを維持できます。
コスト・納期・品質バランスで見る選定基準
例えば1,000個を3ヶ月かけて納品する案件では、初期費用を抑えて精密板金で生産を始め、途中から簡易金型に切り替える「段階的導入」も効果的です。
製造効率化に向けた活用戦略
プロセス短縮に効果的な組み合わせ活用例
弊社プロテックジャパンが提供する簡易金型サービスと精密板金加工を併用することで、「設計確定まで板金で試作→金型で本生産」の流れを効率的に構築できます。これによりリードタイムを短縮しつつ、初期リスクを最小限に抑えることができます。
プロテックジャパンの簡易金型・ダイキャストサービスの活用法
短納期に対応したアルミ製簡易金型の製作から、ダイキャストによる中〜大量生産への展開までワンストップで対応可能です。これにより、顧客の「まず試したい」「早く量産したい」といったニーズに柔軟に応えることができます。
まとめ
本記事では、精密板金加工と簡易金型について解説しました。精密板金加工は、金型不要で柔軟性が高く、試作や小ロットの複雑な部品製造、高精度が求められる分野に最適です。短納期で開発スピード向上に貢献します。一方、簡易金型は初期費用と製作期間はかかりますが、中ロットから量産の安定した部品製造においてコストの効率化に優れています。
これらの加工方法を効果的に使い分けることが、製造効率化の鍵です。目的に応じた選択で、製造効率をさらに向上させましょう。