
製造業において、製品の品質と生産効率を左右する重要な要素が「金型」です。自動車部品から電子機器、日用品まで、私たちの身の回りにある多くの製品が金型によって作られています。
しかし、金型の種類や構造、それぞれの特性を正しく理解している方は意外と少ないのではないでしょうか。
本記事では、製造業に携わる方々に向けて、金型の基礎知識について解説します。
金型とは?
金型とは、金属や樹脂などの素材を特定の形状に成形するための「型」のことです。熱や圧力を加えたり、溶かした材料を流し込んだりすることで、同じ形状の製品を大量かつ高精度に生産することを可能にします。金型は、現代の大量生産を支える基盤技術であり、製品の品質、コスト、生産性に直接影響を与える重要な要素です。
製造業における金型の重要性
製造業において、金型は単なる生産ツール以上の意味を持ちます。製品の最終的な品質や性能はもちろんのこと、生産効率、コスト、さらには市場投入までのスピードにも大きく関わってきます。高品質な金型は、不良品の発生を抑え、安定した品質の製品を供給することを可能にします。
また、効率的な金型設計は、材料費の削減やサイクルタイムの短縮に繋がり、企業の競争力向上に直結します。特に、初期投資となる金型費用は、製品のライフサイクル全体における総コストに大きな影響を与えるため、経営層にとっては戦略的な視点での理解が不可欠です。
金型が使われる主な産業分野
金型は非常に幅広い産業分野で活用されています。主な例としては以下が挙げられます。
- 自動車産業:車体部品、エンジン部品、内装部品など
- 家電・電子機器産業:スマートフォン筐体、テレビ部品、冷蔵庫部品など
- 医療機器産業:注射器、医療用容器、精密部品など
- 航空宇宙産業:航空機部品、ロケット部品など
- 日用品・雑貨産業:ペットボトル、食品容器、文具など
- 建設・建築産業:配管部品、建材など
これらの製品は、それぞれ異なる素材や形状、精度が求められるため、用途に応じた多種多様な金型が開発・使用されています。
金型の主な種類と分類
金型は、その加工方法や成形する材料によって多種多様な種類に分類されます。ここでは、主要な分類方法をご紹介します。
加工方法による分類
プレス金型
プレス金型は、金属板(シートメタル)を上下の金型で挟み込み、圧力を加えて変形させることで製品を成形する金型です。自動車のボディ部品や家電製品の筐体など、比較的薄い金属板から複雑な形状を作り出すのに適しています。
鋳造金型(ダイカスト金型・射出成型金型)
鋳造金型は、溶融状態の材料を金型内に流し込み、冷却・凝固させることで製品を成形します。この分類には、主に以下の2種類が含まれます。
- ダイカスト金型:溶融したアルミニウム合金や亜鉛合金などの金属を高圧で金型に射出し、短時間で精密な金属部品を成形します。
- 射出成形金型(プラスチック金型):溶融したプラスチック樹脂を金型に射出し、冷却・固化させることでプラスチック製品を成形します。
鍛造金型
鍛造金型は、金属素材を加熱し、金型で叩いたり押しつけたりして圧力を加えることで、素材を塑性変形させて成形します。高い強度と靭性を持つ製品が得られるため、自動車のエンジン部品やギア、工具などに用いられます。
押出金型
押出金型は、加熱・軟化した材料を金型の穴(ダイス)から押し出し、一定の断面形状を持つ長尺製品を成形します。アルミサッシや樹脂パイプ、電線被覆材などが代表的な製品です。
材料による分類
金属加工用金型
鉄、アルミニウム、銅などの金属を加工するための金型です。プレス金型、ダイカスト金型、鍛造金型などがこれに該当します。高い硬度と耐摩耗性が求められます。
樹脂成形用金型
プラスチック樹脂を成形するための金型です。射出成形金型が代表的で、精密な形状再現性や表面品質が重視されます。
ゴム成形用金型
ゴム素材を成形するための金型です。圧縮成形や射出成形が用いられ、耐熱性や離型性が重要になります。
ガラス成形用金型
ガラス素材を成形するための金型です。高温に耐える素材が使用され、光学レンズやガラス容器などに用いられます。
金型の基本構造
金型は種類によって細部の構造は異なりますが、共通する基本的な構成要素があります。一般的に、金型は製品の形状を形成する「キャビティ(凹部)」と「コア(凸部)」、これらを保持する「型板」、材料を金型内に導く「ランナー」、製品を金型から押し出す「エジェクタピン」などで構成されます。また、金型を機械に取り付けるための「取り付け板」や、金型の開閉をガイドする「ガイドピン」なども重要な要素です。これらの部品が精密に組み合わされることで、金型は正確な成形を可能にします。
代表的な金型の種類別詳細解説
プレス金型の特徴と用途
プレス金型は、金属板の塑性加工に特化した金型です。主に以下の種類があります。
抜き型
金属板から特定の形状を打ち抜くための金型です。穴あけ加工や、製品の外形を切り出す際に使用されます。
曲げ型
金属板を任意の角度に曲げるための金型です。コの字型やL字型など、立体的な形状を作るのに用いられます。
絞り型
平らな金属板を、カップ状や箱状など、深さのある立体形状に成形するための金型です。自動車の燃料タンクや台所のシンクなどが代表的な製品です。
順送型
複数のプレス加工(抜き、曲げ、絞りなど)を一つの金型内で連続的に行うことができる金型です。材料を順送りしながら、最終製品まで一貫して加工するため、大量生産における生産効率を大幅に向上させます。
ダイカスト金型の特徴と用途
ダイカストとは
ダイカストは、溶融した金属(主にアルミニウム合金、亜鉛合金、マグネシウム合金など)を高い圧力で精密な金型に射出し、短時間で凝固させる鋳造方法です。これにより、高精度で複雑な形状の金属部品を大量生産できます。
参考:ダイカストとは?特徴や製造工程、メリット・デメリットを解説 - プロテック
ダイカスト金型の構造
ダイカスト金型は、高温・高圧に耐える必要があるため、特殊な金型鋼が使用されます。主要な構造としては、溶融金属が流れ込む「スプルー」、キャビティに導く「ランナー」、製品形状を形成する「キャビティ」、製品を押し出す「エジェクタピン」、金型を冷却するための「冷却回路」などがあります。これらの要素が精密に設計・加工されることで、安定した品質の製品生産が可能になります。
ダイカストの利点と適用製品
ダイカストの最大の利点は、複雑な形状の部品を高精度かつ高速で大量生産できる点です。また、薄肉成形が可能で、後加工を最小限に抑えられるため、コスト削減にも貢献します。適用製品は、自動車のエンジン部品やトランスミッションケース、電子機器の筐体、精密機械部品、建材など多岐にわたります。
射出成形金型(プラスチック金型)の特徴と用途
射出成形のプロセス
射出成形は、プラスチックペレットを加熱して溶融させ、その溶融樹脂を高圧で金型内に射出し、冷却・固化させることでプラスチック製品を成形するプロセスです。金型が開いて製品が取り出され、次のサイクルが始まります。
金型設計のポイント
射出成形金型の設計では、以下の点が重要になります。
- ゲート・ランナー:溶融樹脂をキャビティに効率よく供給するための経路。
- 冷却回路:樹脂を均一に冷却し、成形サイクルタイムを短縮するための回路。
- エジェクタピン:成形品を金型からスムーズに突き出すための機構。
- パーティングライン:金型の合わせ目。製品の外観や強度に影響するため、位置が重要。
- 抜き勾配:製品が金型から離れやすいように設ける傾斜。
これらの要素は、製品の品質、成形サイクル、金型寿命に大きく影響するため、創業100年を超える当社の豊富な経験と高度な技術力が求められます。
主な用途と製品例
射出成形は、プラスチック製品のほとんどをカバーすると言っても過言ではありません。スマートフォンやパソコンなどの電子機器部品、自動車の内外装部品、医療用容器、食品容器、日用品、玩具など、私たちの生活に不可欠な多くの製品が射出成形によって作られています。
鍛造金型の特徴と用途
鍛造金型は、金属材料を加熱または常温で金型によって圧縮・成形することで、材料の組織を緻密化し、強度や靭性を向上させることを目的とします。鍛造品は、鋳造品に比べて内部欠陥が少なく、高い信頼性が求められる部品に最適です。自動車のクランクシャフト、コネクティングロッド、ギア、航空機部品、各種工具などが主な用途です。
金型の設計から製作までのプロセス
金型の設計・製作は、製品の品質と生産効率を決定づける極めて重要な工程です。当社では、創業100年を超える実績で培われた技術力と最新の設備を融合させ、お客様の多様なニーズに応える金型を提供しています。
製品設計と金型設計の関係
製品設計と金型設計は密接な関係にあります。製品設計の段階から金型での成形を考慮する「DFM(Design for Manufacturability:製造容易性のための設計)」の視点を取り入れることで、金型製作のコスト削減、リードタイム短縮、そして高品質な製品の安定供給が可能になります。当社の経験豊富な技術者は、製品設計段階からお客様と連携し、最適な金型仕様を提案します。
金型設計の流れ
設計仕様の決定
製品のCADデータ、使用材料、生産数量、要求される精度、表面品質、コスト、納期などを詳細にヒアリングし、金型の基本仕様を決定します。
CAD/CAMによる設計
決定された仕様に基づき、3D CADソフトウェアを用いて金型の詳細設計を行います。この段階で、製品の形状を忠実に再現しつつ、成形性、冷却効率、離型性などを考慮した最適な構造を構築します。
シミュレーション解析
設計された金型に対し、流動解析や構造解析などのシミュレーションを実施します。これにより、成形時の不具合(ショートショット、ヒケ、ソリなど)を予測し、設計段階で対策を講じることで、手戻りを減らし、開発期間の短縮とコスト削減に貢献します。
金型製作の工程
金型製作は、高精度な加工技術と熟練の職人技が融合する工程です。当社は、小ロットから量産まで、あらゆる規模の金型製作に対応できる体制を整えています。
材料の選定と調達
金型に使用される材料は、製品の成形材料や生産量、要求される精度によって厳選されます。耐摩耗性、耐熱性、加工性などを考慮し、最適な金型鋼材(SKD11, HPM38など)を選定・調達します。
加工工程(切削・研削・放電加工など)
選定された金型材料は、高精度な工作機械によって加工されます。
- 切削加工:マシニングセンタなどを用いて、金型の粗形状を削り出します。
- 研削加工:金型の表面を高精度に仕上げ、寸法精度や平面度を確保します。
- 放電加工:硬い材料や複雑な形状の加工、微細な穴あけなどに用いられます。
- ワイヤーカット放電加工:複雑なプロファイルや抜き勾配の加工に適しています。
当社の創業100年を超える技術力は、これらの加工技術を高いレベルで融合させ、お客様の要求に応える金型を生み出します。
熱処理
加工された金型部品は、熱処理(焼き入れ・焼き戻し)を施すことで、硬度や靭性を向上させ、金型の耐久性と寿命を高めます。
仕上げ・研磨
熱処理後の金型部品は、手作業や専用の機械を用いて、鏡面仕上げや梨地仕上げなど、要求される表面品質に研磨されます。これにより、製品の離型性を高め、外観品質を向上させます。
組立・調整
完成した各部品は、熟練の技術者によって精密に組み立てられ、寸法の微調整や動作確認が行われます。金型の各パーツが完璧に連携することで、安定した成形が可能になります。
試作・テスト・修正
金型が完成したら、実際に成形機にセットして試作を行います。この段階で、成形品の寸法精度、外観品質、強度などを詳細に検査し、必要に応じて金型の微修正を行います。複数回の試作と修正を繰り返すことで、量産に最適な金型を完成させます。当社の豊富な経験と技術力は、この試作・修正プロセスを迅速かつ的確に進めることを可能にします。
まとめ
金型は、単に製品を作るための道具ではなく、製品の品質、コスト、生産効率、そして企業の競争力を左右する戦略的な要素です。その種類は多岐にわたり、それぞれが特定の加工方法や材料に最適化されています。
金型設計から製作までのプロセスは、高度な技術力と豊富な経験が求められる複雑な工程です。製品設計段階からの連携、CAD/CAMによる精密設計、シミュレーション解析、そして多岐にわたる加工技術の融合が不可欠となります。
金型設計でお困りの際は、プロに相談するのがおすすめです。プロテックジャパンの金属・樹脂等の金型設計・加工技術力は、お客様の製品開発を強力にサポート可能です。小ロットの試作から大規模な量産まで、あらゆる顧客ニーズに柔軟にお応えできる製造体制と、創業100年という長年培ってきたノウハウで、貴社のビジネスの成功に貢献いたします。
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