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入れ子構造とは?金型設計に欠かせないパーツの解説

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入れ子構造とは?金型設計に欠かせないパーツの解説

入れ子とは、金型内部に組み込まれる交換可能な部品で、主に成形品の一部を構成する重要なパーツです。金型の設計や製造において、入れ子構造の採用はメンテナンス性の向上、製品形状の変更対応、生産性の最適化といった面で大きな役割を果たしています。特に簡易ダイキャスト・簡易金型、石膏鋳造を取り扱う企業にとっては、入れ子の知識は顧客への提案や生産プロセスの最適化に直結します。この記事では、入れ子の基本構造、種類、メリット・デメリット、設計時の注意点、さらに他製造技術との比較をわかりやすく解説します。営業部の皆様が顧客と技術的な話をする際の武器になる内容をお届けします。

金型の入れ子とは

入れ子の定義と基本的な構成要素

入れ子とは、金型の一部として使用される取り外し可能な中子(なかご)構造を指します。主に製品の一部分の形状を成形する目的で用いられ、金型本体とは別体で構成されています。入れ子は通常、以下のような構成で成り立っています。

・成形部:実際に樹脂や金属が流れ込み、製品の形を作る部位
・保持部:金型本体にしっかり固定される部分
・抜け勾配・離型構造:成形後の製品が金型からスムーズに離型できるよう設計された角度や面構造

入れ子は使用頻度や成形材料によって摩耗しやすいため、交換性の高い設計がなされています。

入れ子の目的

金型に入れ子を採用する目的は大きく3つあります。

メンテナンス性の向上

摩耗や破損した場合に、金型全体を交換せず入れ子部分のみの交換が可能で、修理時間・コストを大幅に削減できます。

設計変更の柔軟性

製品形状の一部を変更したい場合でも、入れ子のみ差し替えることで対応でき、試作やバリエーション展開が容易になります。

製品品質の安定化

精度が求められる部位に高精度入れ子を適用することで、成形品質が安定し、不良率の低下につながります。

入れ子が使われる代表的な製品・部品例

入れ子構造は以下のような製品や部品の金型に広く使われています。

・家電部品(例:スイッチ、プラスチック筐体)
・自動車部品(例:ダクト、コネクター)
・医療用部品(例:精密成形品、ディスポ製品)
・電子機器のカバーやコネクターハウジング

これらは設計変更が多かったり、量産中の摩耗が発生しやすいパーツであるため、入れ子構造の利便性が特に発揮される領域です。

入れ子の種類と構造パターン

形状別の分類:円形・矩形・スライド式など

入れ子の形状には、製品の仕様や成形条件に応じて様々なタイプがあります。主な形状分類は以下の通りです。

円形入れ子

丸い形状で、削り出し加工がしやすく、高精度な位置決めが可能。円柱部品や穴あけ加工によく使用されます。

矩形(くけい)入れ子

四角形状の入れ子で、角形状の製品に適応。位置ずれが少なく、固定性に優れています。

スライド式入れ子

斜め方向や横方向から動作して製品のアンダーカット部分を成形するために使われる。自動車部品など複雑形状の成形に適しています。

取り付け方法による分類:圧入式・ねじ込み式など

入れ子の取り付け方式には、金型構造やメンテナンス性を考慮した以下の種類があります。

圧入式

金型に高精度の穴を開け、そこに圧力で入れ子を固定する方法。脱着は難しいが、高い位置精度と固定力を得られます。

ねじ込み式

ねじで固定する方式で、工具があれば容易に交換できる点がメリット。保守・交換の頻度が高い部分に向いています。

スライド嵌合式

入れ子を横から差し込む形式で、組立や分解がしやすく、複数のバリエーションにも対応可能。

材料や表面処理の違いと選定基準

入れ子の素材や処理方法は、製品の材質や成形条件に応じて選定されます。

材質

SKD11、SKH51、ステンレス、焼入れ鋼など。耐摩耗性や熱伝導性を重視して選定。

表面処理

窒化処理、TiNコーティング、DLC処理などを施すことで、耐摩耗性・離型性が向上。

選定基準

成形材料(樹脂・金属)、使用頻度、加工精度、冷却効率などの要件を総合的に判断して決定

入れ子構造を使うメリット

メンテナンス性の向上と金型寿命の延長

入れ子構造の最大の利点のひとつが、金型の部分的な修理が可能であることです。摩耗や破損が発生しても、入れ子のみを交換すればよいため、金型全体の再製作が不要になり、メンテナンス時間の短縮と金型寿命の延長に直結します。

設計変更や形状バリエーションへの柔軟対応

製品設計の一部を変更する場合、通常は金型全体を作り直す必要がありますが、入れ子を使用すれば、該当部位のみを差し替えることで素早く対応可能です。これにより、開発スピードの向上とコスト削減を両立できます。

コスト削減と作業効率の最適化

金型製作費用のうち、特に高精度が求められる部分にだけコストを集中させることができるのも入れ子の特長です。交換式のパーツ構造によって作業効率が向上し、トータルの製造コストが抑えられます。

入れ子を使用する際の課題と注意点

位置ズレ・段差発生などの精度管理

入れ子の組込み精度が低いと、成形品に段差や歪みが発生することがあります。したがって、入れ子部位の高精度加工と、金型本体との適切な嵌合設計が不可欠です。

熱膨張・冷却性能に対する影響

入れ子と金型本体の材質が異なる場合、熱膨張係数の違いによる影響で変形やクラックが生じるリスクがあります。また、冷却穴の配置や冷却媒体の流れが最適でないと、冷却ムラによる成形不良が起きることもあります。

摩耗・破損への対策と交換タイミングの見極め

入れ子は摩耗しやすい部品であるため、定期的な摩耗チェックと適切な交換タイミングの見極めが重要です。使用履歴の記録管理や予防保全体制の構築が、設備保全の鍵を握ります。

簡易金型・石膏鋳造における入れ子の活用

簡易ダイキャストにおける入れ子活用の工夫

簡易ダイキャスト金型では、製品試作や少量生産のため、変更頻度の高い箇所に入れ子構造を取り入れることで、変更対応の工数を削減し、コストと納期のバランスがとれた提案が可能となります。

石膏鋳造との併用で設計柔軟性を高める方法

石膏鋳造では、形状の複雑さや肉厚コントロールが求められるため、設計段階で入れ子との併用設計を行うことで、設計自由度を高めつつ、コストと品質を両立できます。

少量生産や試作段階における効果的な使い方

入れ子は、同一金型で形状違いの製品を試作する際に極めて有効です。複数の入れ子バリエーションを用意すれば、短期間で複数パターンの試作が可能となり、開発プロセスの最適化に寄与します。

金型入れ子と他製造技術の比較

金属3Dプリンターとの比較:造形精度と設計自由度

金属3Dプリンターは一体成形による高い設計自由度を持ちますが、耐久性・量産性では入れ子構造の金型に分があります。一方、入れ子は交換性に優れる反面、形状制約が発生するため、製品特性に応じた使い分けが重要です。

通常の一体型金型との違い:コストと保守性

一体型金型は初期製作コストが低めで構造がシンプルですが、保守性が低く、変更に不向きです。対して入れ子構造は、ランニングコストや対応力の面で優れており、ライフサイクル全体でのコストバランスに優れています。

製造工程における導入タイミングと使い分け

開発初期の試作段階では石膏鋳造や3Dプリント、量産フェーズでは簡易金型+入れ子構造のように、工程のステージごとに最適な手法を選定することが、全体最適につながります。

まとめ

金型における入れ子構造は、製品形状の柔軟対応、メンテナンス性の向上、コスト削減といった多くの利点を持ちます。営業担当者がこの知識を理解し、簡易ダイキャスト・簡易金型、石膏鋳造との連携ポイントを的確に提案できれば、顧客からの信頼と満足度向上につながります。自社の技術と入れ子の利点を組み合わせて、より魅力的なソリューションを提供していきましょう。

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