
製品開発の現場では、コストや性能、納期のバランスを考慮しながら、最適な加工方法や素材を選定することが求められます。中でも「ダイキャスト」は、複雑な形状の金属部品を精密かつ量産性高く作れる加工法として、多くの業界で採用されています。しかし、「ダイキャストの材質」と一口に言っても、アルミ合金や亜鉛合金など複数の選択肢があり、それぞれに特性や適性が異なります。
この記事では、「ダイキャスト 材質」というテーマをもとに、代表的な金属材質の特徴を整理し、用途別の使い分けポイントを解説します。営業担当者の皆様が、自信を持って素材選定や顧客提案を行えるよう、分かりやすくご紹介してまいります。
ダイキャスト加工に使用される材質とは
ダイキャスト加工に使用される材質には、いくつかの条件が求められます。主な条件としては、溶融しやすいこと、型に充填しやすい流動性があること、短時間で凝固すること、そして仕上がり後の寸法精度が高いことが挙げられます。また、成形後の機械的特性や耐食性、コストバランスも重要な判断基準となります。
アルミ合金・亜鉛合金が選ばれる理由
これらの条件を満たす代表的な材質が、アルミ合金と亜鉛合金です。アルミ合金は軽量かつ耐食性に優れ、強度もあるため、構造部品などに広く使われています。一方、亜鉛合金は流動性が高く、複雑形状の成形に向いており、寸法精度も安定しています。そのため、小物部品や意匠性の高いパーツに多く採用されています。
アルミダイキャストの特徴と適用例
アルミ合金の主な物性
アルミ合金は、密度が低く軽量でありながら、優れた機械的強度を持つ素材です。さらに、熱伝導性が高いため放熱性が求められる電子機器部品にも適しています。また、酸化皮膜による耐食性の高さも魅力であり、屋外や水回りなどの厳しい環境にも適応可能です。
耐食性・軽量性が求められる分野での使用
そのような特性を活かして、アルミダイキャストは自動車部品、通信機器筐体、住宅設備機器など、軽さと耐久性を両立したい分野で広く利用されています。特にEV市場の成長に伴い、電池やインバータ周辺のパーツとしての需要も高まっています。
使用上の注意点と限界
一方で、アルミは高温での成形が必要なため、金型への熱ダメージが大きく、型寿命が短くなる傾向があります。また、非常に薄い肉厚の成形や微細なディテールの再現には制約があるため、形状設計段階での工夫が求められます。
亜鉛ダイキャストの特徴と適用例
亜鉛合金の主な物性
亜鉛合金は、融点が低く、金型内に素早く流れ込みやすい流動性の高さが特長です。また、鋳造後の寸法精度が非常に優れており、複雑形状や薄肉部品の成形にも適しています。機械的強度もあり、衝撃に対する耐性も比較的高い素材です。
複雑形状や小物部品に適した理由
亜鉛合金は、微細なディテールや薄肉部分の再現性が高いため、装飾性を伴う部品や複雑な構造を持つ小型部品に適しています。たとえば、自動車内装の装飾パーツ、ファスナー部品、電子機器のジョイント部などでの使用が一般的です。成形後の仕上がりが美しく、メッキ処理にも適している点も評価されています。
コスト面と精度面のバランス
亜鉛は金型への負担が少なく、型寿命が長いという利点があります。そのため、量産時の型交換頻度を抑えることができ、長期的にはコストメリットにつながります。また、比較的小型の金型で済むため、初期費用を抑えたいプロジェクトにも適しています。
アルミと亜鉛の使い分けポイント
製品サイズと構造の違いでの判断
アルミは比較的大型の製品や、構造部材などに適しており、軽量化と剛性を両立したい場合に選ばれます。一方、亜鉛は小型部品や複雑な形状が求められる製品に適しており、寸法精度や意匠性が重視される場合に選択されます。
使用環境と耐久性の要件
屋外や高温・湿潤環境においては、アルミ合金の耐食性が活かされます。反対に、室内使用や摩耗頻度が高い箇所では、亜鉛合金の耐久性が役立つケースもあります。設計時には、使用環境に応じた材質の選定が不可欠です。
初期費用とランニングコストの観点
アルミは型の消耗が早いため、初期の金型費用や交換費用が発生しやすい傾向にあります。一方、亜鉛は型寿命が長いため、長期的に見るとランニングコストを抑えることが可能です。製品のライフサイクル全体を見据えた判断が必要です。
まとめ
ダイキャストに使用される材質には主にアルミ合金と亜鉛合金がありますが、それぞれに特有の強みと用途が存在します。軽量で耐食性に優れるアルミ、複雑形状と精度に強い亜鉛。どちらの材質を選ぶかは、製品の目的や使用環境、予算、設計要件によって変わってきます。
また、試作段階での材質検証やコスト試算には、簡易ダイキャストや石膏鋳造などの簡易型技術の活用も有効です。目的に応じて適切な材質を選定し、最適な製品開発につなげていくことが、競争力のあるモノづくりへの第一歩となります。